23日(水)

出発〜エストニア到着

午前11時、成田を飛び立った飛行機が、ヘルシンキ経由でタリンへと向かった。所要時間は約12時間。Evergreenにとっては初の海外演奏旅行。待ち遠しさと不安とが入り混じった空の旅は、長くも短くも感じられた。タリンの空港でガイドのヤンネさんが迎えてくれるというので、「Mu isamaa on minu arm」をヘルシンキの空港でもう一度練習し、その時に備えた。結局、到着直後には歌わなかったが、この歌は後に「歌の広場」にて披露することになる。

知る人のないような異国の地でヤンネさんが迎えてくれたことは、Evergreenにとってとても頼もしいことだった。数ヶ月前まで日本に留学していたヤンネさんは、温和な表情と優しい雰囲気をもつ女性で、とてもきれいな日本語を話す。話し方もチャーミングで、Evergreenのみんなが、一目見たときから好感を持った。この出会いから旅行のあいだ中ずっと、Evergreenは、ヤンネさんが献身的にサポートしてくれる姿を見ることになったのだ。静かな、けれども強い温かさを感じる姿だった。私には、乾燥したホールの中で歌を歌うEvergreenのために、レモン水を持って入ってくるヤンネさんの姿が、強く印象に残っている。

当日は4時起き。めぐから「みんな、起きてますか〜」メールが届き、速攻返信。みんなはちゃんと起きてるのかな〜。睡眠時間は少なかったけど、気分はすっきり。まずは順調な滑り出し。重いスーツケースを引きずり、人気のない道を歩く。
集合場所の駅には、すでに何人かが待っていた。大小さまざまなスーツケースが並ぶ。みんなで一緒に成田空港駅へ向かう。車中ではみんな眠そうだ。一睡もしていない人もいるらしい。そして、成田空港に到着。馬鹿でかいロビーで、別場所に集合したメンバーも含め、全員集合。
そして、搭乗手続きの時間になり、みんなで飛行機へ乗り込む。
飛行機の中でのみんなの時間の過ごし方は様々だった。大半は暗譜に没頭。「Mu isamaa on minu arm」「Put vejini」が皆一様に覚えきれていないらしく、それぞれが楽譜にかじりついて必死に覚えている風景が見られた。かく言う私もこの2曲だけがまだ暗譜しきれておらず、最初のうちはずっと暗譜をして時間を過ごした。暗譜の合間に、エストニアとラトビアでの日々に思いを馳せる。一番心に掛けていたのは、向こうでどのような人と出会い、どのような交流を果たすことになるのだろうか、ということ。英語が得意でない私は、きっと向こうでいろいろ話したいことがあっても、なかなか伝えられないのではないかと心配だった。もともと初対面の人と話すのは、日本人であっても苦手だった。でも、エストニアに行って、合唱をするいろいろな国の人たちと触れ合えるなんて、そうあることではない。この機会は絶対逃してはならない、貴重な体験だろうという思いはあった。そのためにも、今のうちに話したいこと、聞きたいことをあらかじめ考えておこうと、頭の中で英文を作っていた。
トランジットで寄ったヘルシンキで、皆で「Mu isamaa〜」を練習。小さな声ではあったが、近くにいた人にはしっかり聞こえており、ある女性に「Excellent!Good pronunciation!」とお褒めの言葉をいただき、大変誇らしい気持ちになった。私たちのエストニアでの大進化は、この瞬間に始まったと言っていいと思う。みんなの気持ちが高まり、ひとつになり始めたのを感じた。
ヘルシンキから小一時間あまりでエストニアへ。
ガイドのヤンネさんに初めてお会いし、これから始まる、多忙ながらも喜びあふれる日々への期待に胸膨らませ、エストニアの土地に始めの一歩を踏み出した。

タリン旧市街

タリンの旧市街は、石畳の敷き詰められた情緒ある街並を、500年前の中世ヨーロッパの趣そのままに残した美しい街。乾燥した冷たい空気と街並の美しさに、胸は躍る。泊まったホテル「Vana Wiru」は旧市街の中にあって、清潔感いっぱいの過ごしやすいところだった。これから何日もお世話になるホテルの感じのよさに、ほっと胸をなでおろした。その後、ヤンネさんに旧市街を案内してもらいながら、Evergreenは、地に足が着かないような感覚で街を歩いた。ついにタリンに来たのだ。Evergreenのなかを、興奮と緊張感が走った。

夕食をとったレストラン「Peppersack」は、これまた趣深い、中世の情緒のあふれるところ。まだ日本時間の感覚が残っていたEvergreenは、心地よい(?)睡眠欲を感じながら食欲を満たした。ただ、エストニアの生野菜が、甘く新鮮で、水分たっぷりだったことだけは覚えている。

その日は、到着の興奮が覚めやらぬうちに、眠りについた。

街の中心には尖塔を持つ旧市役所と石畳の広場があり、城壁が街を囲むようにところどころに残っている。この街が城砦都市だったことが実感できます。崩れかけた城壁の通りは通称“セーターの壁”、編み物を山のように売っています。
タリンを自分の足で歩くと、なんだか”ぼわっ”とした思いで胸が満たされました。
ぶらぶら散歩すると、馬に乗った金髪のお兄さんに日本の歌謡曲を弾いてくれたファンキーな流し?のおじさん、あとひとなつっこいロシア人の子供。いろんな人に出会えました。
ここの文化に圧倒されっぱなしでしたが、和装で堂々と歩くと自分を感じられて満ち足りた気持ちになれました。歌うことへの喜びと不安が“ぼわっ”と吹き飛んで軽い興奮に満たされました。初めて訪れたタリンじゃけど、なぜか懐かしい雰囲気を感じます。木と石の違いはあっても色合いが自然で時間がゆっくり流れるところは日本の田舎みたいです。
あ、それと この日食事をしたレストラン“peppersack”で”tea”を頼むと…。予想外の味が楽しめますよ!