22日(月)

ティカル遺跡ツアー

この日は、マヤ文明の遺跡として有名なティカル遺跡ツアーの日である。グァテマラで迎える初めての朝。しかし、前日にほぼ1日かけて到着したというのに、何と朝4時起床! これだけ早いと、もはや時差ボケも何もなく、団員一同どうにか早起きしたのだった。

ティカルへはグァテマラ・シティから飛行機で1時間弱、そこからさらにバスで1時間弱かかる。全行程バスで行くと実に10時間かかるらしい。それだけでいかにも秘境という感じがして、旅人心がくすぐられる。観光目的でこの国に来たわけではないが、今日ばかりは遺跡のロマンに浸るとするか。

飛行機でフローレス空港につくと、早朝のグァテマラ・シティとはうってかわっての暑さ。さすが「常春の国」。ここで現地のガイドさんが合流し、空港から貸切のマイクロバスで遺跡に向かう。車窓からは、森、湖、村など多彩な景色が広がる。ガイドさんの解説も饒舌だ。

すっかりグァテマラ気分に酔い始めた団員、一曲歌うことに。『Luna de Xelajú』、グァテマラの人なら知らぬ人はいないといわれるほどの曲で、この演奏旅行でも何度も私たちの心の中に流れることとなった曲だ。正式のステージではないが、グァテマラに来て初めて歌う歌。さて、グァテマラ人のガイドさんの反応やいかに…?

ガイドさん 「ところで右手前方に見えるのは○○で…」

う〜んプロだ。

そうこうするうちに遺跡の入口に着くと、眼前には広大なジャングル。遺跡の広さは16km2におよぶ。このジャングルがかつては巨大文明都市であったとは…。当時の文明のレベルの高さと、自然の力とを同時に思い知らされるようだ。ガイドさんの案内により要領よくまわるとはいえ、実に3時間歩きっぱなしというなかなかハードな行程。果たして体力はもつのか?

しばらく歩くと、石造のピラミッド型の建造物が見える。これはかつての神殿で、ティカル遺跡にはこうした建造物がいくつかある。近くで見ると、今までに見たことのないような建物だ。ピラミッドには階段がついており、そこから頂上に登れるようになっている。しかし……あまりに傾斜が急で、階段というより、はしごである。高さも60mほどあり、下を見てしまったら怖くて身動きが取れなくなってしまう。

恐る恐る頂上に上ると、足場が狭く、眼下にはとても急なピラミッドの斜面があって足をすくませる。しかし少し顔を上げれば、広大なジャングルを一面に見渡すことができ、その先には草原も広がっている。いったいこの景色はどこまで続いているのだろう、としばしボーッとしてしまった。

団員全員が頂上に上ったところで、1曲歌うことにした。私たちのとても好きな歌の一つである『てぃんさぐぬ花』。歌声が風に乗ってどこまでも飛んでいくような感触がして、とても心地よかった。頂上やピラミッド下にいた別の観光客から拍手を贈られ、少し誇らしい気持ちであった。

さらに時々ピラミッドに登りつつ歩き続ける。ちょっと疲れてばてそうになると、昼食時に飲む地ビール「Gallo」(ガヨ)を想像し、「ビール! ビール!」と掛け声を出して空元気を出すが、後半になるとさすがに団員の口数も少なくなり、ビールの掛け声も空しく響き始める…。

終盤に差し掛かり、ある建物跡に登る。向かい側にあるピラミッドに向かって大声を出すと、山びこのように声がこだますることが分かった。となれば我々のとる行動はただ一つ。歌はもちろん『Luna de Xelajú』である。やはり場所のせいか、バスで歌ったときに比べ、とても心地よかった。ここでも歌い終わると、ピラミッドの上にいた他の観光客から惜しみない拍手をいただき、とてもすがすがしい気分だった。

やがて遺跡めぐりもほぼ終了、レストランで昼食となる。鶏肉のグリルを、現地のビールとともにいただく。グァテマラの鶏料理はかなりいけるらしいとの噂をきいていたが、確かにおいしい。ビールもクセがなくて喉越しがよかった。

丸一日いても飽きないぐらいなのだが、帰りの飛行機の時間も迫っている。名残惜しい気持ちでティカルを後にする。

宿に帰って夕食をとった後、翌日に向けた練習に臨む。そして練習が終了した夜10時半ごろ、仕事などの都合で部分参加となっているメンバーも無事到着した。これで、今回の演奏旅行に参加する全メンバーが揃ったことになる。

さあ、明日からいよいよ国際合唱祭の始まりだ!

<文責:高橋敦司>