26日(金)

アンティグア観光/市内行進/野外コンサート

旅行6日目。いつも通り、7時半に朝食、9時に宿舎をバスで出発した。今日は古都アンティグアで市内行進、夜には他の合唱団との合同の野外演奏会の予定であった。

バスは夜に演奏会を行うコンパニア・デ・ヘスス修道院跡に到着。この日の演奏会は修道院跡入口の野外特設ステージにて行われる予定となっており、着々と夜に向けての準備が進められていた。敷地内には400席程度の座席が用意され、ステージ上ではマイク・照明の確認が行われていた。

午前中は自由行動であったこともあり、我々はアンティグア観光に出掛けた。ただ、我々がまず向かったのは、遺跡や教会ではなく、市内最大のスーパー。これから先、ほとんどお土産を買う時間的余裕がなかった為、このタイミングで大量に買い込もうという作戦であった。スーパーの小さなコーヒー豆売り場はあっという間に日本人の大行列。慌てて注文を取りまとめる白石さんには、本当にご迷惑をお掛けしてしまった。

やや予定時間を超過してスーパーを出、遺跡を見学した後、他の合唱団と合流して、市内の遺跡横の広場で昼食。この頃になると、コロ・ビクトリアのメンバーとも相当打ち解け、互いに片言の英語を使って、音楽やダンスの話をするようになっていた。団員の中には、独自のスペイン語メモを作成し、彼らとスペイン語で会話しようと努力する者もいた。逆に彼らも日本語のメモを作って、一生懸命我々に日本語で語り掛けてくれた。決して完璧な意思疎通が出来たわけではないが、互いを理解しようとする努力は、少しずつ信頼に変わっていった。また彼らの底抜けの明るさは、常に我々に安心感をもたらしてくれた。

昼食後ヘスス修道院跡に戻り、わずかな時間を使ってリハーサル。「今日も最高の演奏を!」。全員の意思は統一された。

この日の衣装は、男性は作務衣、女声は浴衣。市内行進のスタート地点であるメルセー教会に向かう間、注目度No.1であった。

市内行進は、オーストラリアを先頭に、キューバ、日本、メキシコの順で、警官が車道を通行止めして行われた。日の丸を先頭に歩く作務衣・浴衣集団は、やはり注目度No.1! 歩いていると、「Japón(ハポン)!」の声援もあがり、とても誇らしい気分であった。

行進では、角(かど)に来る度に順番に歌うという企画もあり、我々は島唄と谷茶前を演奏した。伴奏なしの上に、踊り慣れない石畳で踊った谷茶前は一生忘れないであろう。

ヘスス修道院跡に戻り、ステージリハを終えた後は、しばしの休憩時間だった。既に日は暮れ、後は本番を待つのみであった。

乾季にあたるこの時期は、グァテマラでは日のあたる昼は過ごしやすいのだが、夜の冷え込みは結構厳しく、作務衣、浴衣では、鳥肌が立つ程の寒さであった。全員上着は着込んだものの、草履であったため、冷えた体を温めるのに苦労した。ただこの時、差し入れで出され、中庭で飲んだホットチョコレートには、本当に心と体が癒された。コロ・ビクトリアの皆さんの、こういった細かい配慮には、何度も感動させられた。

いよいよ演奏スタート。我々はオーストラリア、キューバに続く3番目の演奏であった。修道院跡周辺は店も閉まり、既に真っ暗。その中で一際明るいステージは、異様とも言えるほどの光を暗闇の中に放ち、その明るさがゆえの冷たさ、そして大きさを秘めているようだった。一方で客席は暗くて見えないものの、雰囲気で立ち見がいることが分かるくらいのエネルギーに満ちていた。

我々の前のオーストラリア、キューバの演奏は、その空気すべてを味方につける素晴らしいパフォーマンスで、拍手は中々鳴り止まなかった。それを前にした我々は震えが止まらなかった。しかしその震えは恐怖や不安から来るものではなく、自信と気合から来る“武者震い”であった。

この日の我々の演奏曲は、『さくら』、『斎太郎節』(男声)、『ほたるこい』(女声)、『狩俣ぬくいちゃ』、『島唄』、『Luna de Xelajú』であった。いよいよ演奏の始まりである。

ステージ上で、我々は必死に叫んだ。もちろん声楽的に叫んだわけではない。“心”の叫びである。我々が持っているもの、伝えたいこと、この素晴らしいステージで歌える喜び・・・、その全てをアンティグアの夜空に向けて歌い続けた。曲が終わる度に客席からものすごいエネルギーが我々に注がれた。自信と気合はいつの間にか感動と感激に変わり、ステージ上で涙をこらえるのに必死だった。

締めくくりの『Luna de Xelajú』では、前奏後、歌詞を歌い始めた瞬間に、地も割れんばかりの声援と大きな拍手。永年合唱をやっているが、演奏中にこれほど大きな拍手をもらうのは初めての経験であった。我々はその拍手をも伴奏として歌い続けた。曲の終わりには客席総立ちのスタンディング・オベーション。もう涙をこらえる必要はなかった。

このステージでEvergreenは大きなプレゼントをもらったように思う。それが一体何なのかは分からない。ただ、そのプレゼントは永遠に我々の心に残り続けると思う。

そして我々はこの日、もう一つの大きなプレゼントをもらった。コロ・ビクトリアが我々のためにと、ステージ上で『赤とんぼ』を演奏してくれたのだ。その歌は、強く、優しく、また時に悲しく、我々の心に響いた。この赤とんぼは我々の一生の宝物になると思う。

すべての演奏が終わったのは23時を過ぎていた。演奏終了後も、聴衆の方々からは「ありがとう! ありがとう!」と声を掛けられ、慣れないというより、やったことのないサインまでしてしまった。この日、立ち見を含めれば、約700人ものお客様が集まったとのことであった。

遅い夕食を中庭で済ませ、バスに分乗して宿舎に着いたのは、深夜1時半。熱狂と感動に包まれた一日が終わった。

<文責:宮崎竹大>