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― Program Note(2002/02/10) ―
Orbán György:
Regum regis ave(めでたし、王の中の王の民よ)
トランシルバニアに生まれ、現在ではハンガリーに在住しているジェルジ・オルバーン(1947-)の1988年の作品。Regum Regis Aveは、11世紀後半にハンガリーを治め後に聖人とされた王、ラースロー1世への賛歌として中世から存在する。オルバーンは、この賛歌の旋律を原型に近い形で用いているが、中間部ではこれとは対比的な音楽を新たに加えており、一部、テキストにも別の聖歌の物を用いている。曲の最後にテノールが歌う中間部の動機が、聴く者に心地よい余韻を残す。
2002/11/13補足
先日、作曲者であるオルバーン氏が来日しました。幸いにも、11月4日に、短い時間ながらオルバーン氏から直接この曲の指導を受けることができました。地方性のある聖歌なので納得の行くことですが、歌詞についてはオルバーン氏が別の聖歌の断片を挿入したのではなく、原曲として採取した詞のバリエーションがこちらが調べたものと違っていたのだということが分かりました。
Olivier Messian:
O sacurm convivium!(聖なる饗宴)
オリヴィエ・メシアン(1908-1992)はフランスに生まれ、オルガン奏法や作曲、また典礼音楽を学び、23歳でパリのトリニテ聖堂のオルガニストとして活動を始める。作曲家でオルガニストでもあるフォーレ、フランク、同世代のデュリュフレらの影響を受け、また彼自身の信仰に従い、作曲活動に専念していった。1937年に作曲された「聖なる饗宴」は、3/8+3/4+3/8+2/4というリズムが繰り返し用いられており、宗教の普遍性が音楽に著されている。これはすなわち、毎朝毎夕、教会から人々の耳に届けられた鐘の音のリズムを模している。
Ligeti György:
「ナンセンス・マドリガル」より Two dreams and little bat(二つの夢と小さなコウモリ)
リゲティ・ジェルジ(1923-)は、ハンガリーで生まれ育ち、後に社会主義の抑圧を逃れるために亡命する。西側諸国の現代音楽との衝撃的な出会いを経て、自らの音楽スタイルを確立していった。1988年よりキングズ・シンガーズのために書き下ろされた組曲「ナンセンス・マドリガル」は、アルトT、U、テナー、バリトンT、U、バスの6声の編成で書かれており、テキストにはヴィクトリア朝時代の英詩が用いられている。Two dreams and little batは、アルトによって歌われる「セブン・オークスに住んでいた少女の夢」と、バス・バリトンによって歌われる「ナイン・エルムスに住んでいた少年の夢」が複雑なリズムで絡み合い、さらにテナーによる、「キラキラ星」の変奏、「キラキラコウモリ」が入り込むことによって、非現実的な幻想的な空間が作り出されている。
Nils Lindberg:
Shall I compare thee to a summer's day(きみを夏の日にたとえようか)
歌曲集「おお、わが恋人よ」より スウェーデン生まれの作曲家兼ジャズ・ピアニスト、ニルス・リンドベリ(1931-)による1987年の作品。「エリザベス朝の詩による花束」という副題を持つ歌曲集"O Mistress mine"に収められている。シェイクスピアによる18番目のソネットShall I compare…における、リズムの構造、詩に内在する音楽性に魅せられて、短時間で仕上げられたとされる。親しみやすい旋律とジャズ風味の編曲によって、現代人の心を打つ作品となっている。
Charles Camilleri:
Pacem in Maribus(大海の平和ならんことを)
Pacem in maribus 地中海に浮かぶマルタ島に生まれたチャールズ・カミレーリ(1931-)は、島に伝わる民謡の影響を強く受けて、独自の作風で300を超える作品を生み出している。Pacem in maribusは、1989年に行われた第1回マルタ国際合唱フェスティヴァルのために書かれた作品。静かな幕開けの中で徐々に主題が進行していき、やがて感情の昂まりと共に、荘厳な幕切れを迎える。
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